犬が服やタオルをくわえて運ぶのは、その多くが本能や愛情からくる微笑ましい行動ですが、布類には「誤飲」という見過ごせないリスクもあります。洗濯物のタオルや、脱いだ靴下を、得意げにくわえて運んでくる愛犬。「なにを持ってきたの?」と、つい笑ってしまいますね。理由と、気をつけたいことをあわせてお話しします。
犬が物をくわえて運ぶのはなぜ?
犬が物をくわえて運ぶしぐさには、犬ならではの気持ちや本能がこめられています。
- 運ぶ本能…犬の祖先は、獲物や食べ物を巣に運んでいました。その名残で、物をくわえて運ぶ行動が見られます。とくに、獲物を回収するために改良されたレトリバー系は、くわえて運ぶのが得意です
- 飼い主のにおいで安心したい…飼い主のにおいがついた服やタオルは、犬にとって落ち着くアイテム。そばに置いて安心しています
- 遊び・かまってほしい…持ってくると飼い主が反応してくれる、と学び、遊びやかまってのアピールとして運んでくることも。おもちゃを持ってくるのと、同じ気持ちです
- うれしい・興奮…飼い主の帰宅時など、うれしくてテンションが上がると、何かをくわえて表現する子もいます
- 集めたい・隠したい…お気に入りを一か所に集めたり、大事なものを隠したりする、という子もいます
どれも、飼い主への愛着や、犬らしい本能からくる自然な行動。基本的には、微笑ましく見守ってあげてよいものです。

友人の家のレトリバーは、来客があると必ずおもちゃをくわえてお出迎えするそうです。「うれしすぎて、手ぶらじゃいられないみたい」と。あの、何かをくわえた得意げな顔、たまらないですよね。犬にとっては、精いっぱいの歓迎表現なのかもしれません。
気をつけたい「誤飲」|腸閉塞と片づけの工夫
誤飲は、くわえて運ぶ行動でもっとも気をつけたいリスクです。くわえて運ぶこと自体は問題ありませんが、とくに、靴下やタオル、ひも状のものは、遊んでいるうちに飲み込んでしまうことがあります。
布やひも状のものを飲み込むと、胃や腸に詰まる「腸閉塞」を起こす危険があります。こうなると、手術が必要になることも。かわいいからと運ばせていた靴下を、いつの間にか飲み込んでいた、というケースは少なくありません。対策は、飲み込むと危ないもの(靴下・ひも・小さな布切れなど)は、犬の届かない場所に片づけておくこと。運ばせて遊ぶなら、丈夫で飲み込めない大きさの、犬用おもちゃを選びましょう。もし飲み込んでしまった疑いがあるときは、元気そうに見えても、すぐ動物病院に相談してください。
取り上げようとするとうなる・噛むとき
取り上げようとするとうなる・噛むのは、「これは自分のもの、取らないで」という所有欲(守ろうとする気持ち)の表れです。くわえたものを取り上げようとしたら、うなられた・噛まれそうになった——こんな経験はありませんか。
ここで無理に奪おうとすると、犬は「取られる!」とますます強く守ろうとしたり、あわてて飲み込んでしまったりして、逆効果。おすすめは、おやつとの「交換」で、自分から出させる方法です。持っているものより魅力的なおやつを見せ、「ちょうだい」で口を離したら、おやつと交換して褒めます。ふだんから、執着していない物で「ちょうだい」の練習をしておくと、危険なものをくわえたときにも、安全に出させやすくなります。うなりが強い、噛もうとする、という場合は、無理をせず、ドッグトレーナーや獣医師に相談しましょう。
まとめ
服やタオル、おもちゃを運ぶのは、獲物を運ぶ本能や回収犬の名残、飼い主のにおいで安心したい気持ち、遊びやかまってのアピール、うれしさ、集めたい気持ちなどが理由で、多くは微笑ましい行動です。ただし、靴下やひも状のものは、飲み込むと腸閉塞を起こす危険があるので、危ないものは届かない場所に片づけ、運ばせるなら飲み込めない大きさのおもちゃを。飲み込んだ疑いがあれば、すぐ受診を。また、取り上げようとするとうなる・噛むのは所有欲の表れなので、無理に奪わず、おやつとの交換で出させるのが安全です。愛犬の「くわえて運ぶ」を楽しみつつ、誤飲にだけ気をつければ、安心して見守れます。
「犬 くわえて運ぶ」についてのFAQ
Q. 犬が飼い主の服や靴下をくわえて運ぶのは、なぜですか?
A. いちばんは、飼い主のにおいがついた物で安心したい、という気持ちです。服や靴下には大好きな飼い主のにおいが染みついていて、犬にとっては落ち着くアイテム。加えて、獲物を運んでいた本能の名残、持ってくると構ってもらえるという学習、うれしさの表現、なども理由になります。愛着からくる自然な行動ですが、靴下などは飲み込むと危険なので、その点だけ注意してあげてください。
Q. くわえて運ぶのをやめさせたほうがいいですか?
A. 行動そのものは微笑ましいものなので、無理にやめさせる必要はありません。大切なのは、「何を」運ばせるか。靴下やひも状のものなど、飲み込むと腸に詰まる危険がある物は、犬の届かない場所に片づけましょう。そのうえで、丈夫で飲み込めない大きさの犬用おもちゃを運ばせて遊べば、本能や気持ちを満たしてあげられます。危険な物は遠ざけ、安全な物で楽しませる、が基本方針です。
Q. くわえた物を飲み込んでしまったかもしれません。どうすれば?
A. すぐに動物病院へ連絡してください。布やひも状のものは、胃や腸に詰まって「腸閉塞」を起こす危険があり、手術が必要になることもあります。元気そうに見えても、症状が後から出ることがあるので「様子見」は禁物です。連絡のときは「いつ・何を・どのくらいの大きさのものを」飲み込んだ疑いがあるか伝えられると、獣医師が判断しやすくなります。無理に吐かせようとせず、まず相談を。
Q. くわえた物を取ろうとすると、うなります。どうしたら?
A. 力ずくで取り上げるのは避けてください。うなるのは「取らないで」という気持ちの表れで、無理に奪うと守る気持ちが強まったり、あわてて飲み込んだりします。コツは、交換に使うおやつを「特別なもの」にすること。ふだんのフードより、ゆでたささみやチーズなど、その物より魅力的な報酬なら、あっさり口を離してくれます。日ごろから、どうでもいい物で「ちょうだい→交換→褒める」を遊び感覚で練習しておくと安心です。うなりが激しい・噛もうとするときは、専門家に相談を。
本記事は、編集部や飼い主自身の経験・見聞きした情報をもとにまとめたものです。執筆者は獣医師ではありません。ペットの健康・病気・体調に関することは症状や個体差によって適切な対応が異なります。気になる症状がある場合や判断に迷うときは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。