犬が顔をこすりつけるのは、口のまわりを拭く・においをつけるといった自然な行動がほとんどですが、しきりに・執拗にこするときは、目や耳、皮膚のトラブルが隠れていることもあります。ごはんのあとに、床やソファに顔をゴシゴシ。散歩から帰って、カーペットにすりすり。犬が顔をこすりつけるしぐさは、じつは「口のまわりを拭く」「においをつける」といった、自然な行動であることがほとんどです。ですが、しきりに・執拗にこするときは、目や耳、皮膚のトラブルが隠れていることも。犬が顔をこすりつける理由と、注意したいサインを解説します。
犬が顔をこすりつける理由|多くは自然な行動
顔こすりの多くは、心配のいらない、行動的・生理的な理由によるものです。
- 口のまわりを拭いている…食後に、口元についたフードや水分が気になって、床やソファでぬぐう。とくにウェットフードのあとや、口まわりの毛が長い子に多い
- においをつける・つけたい…家具や地面に自分のにおいを残すマーキングや、逆に、気に入ったにおいを体につけたい、という本能的な行動
- リラックス・満足・うれしさ…食後や寝起き、散歩のあとに、伸びをしながらすりすり。気持ちよさや、満足感の表れ
- 軽いかゆみ・違和感を取る…目やにや涙、ほこりなどを、こすって取ろうとする
こうした顔こすりは、単発で、そのあとケロッとしているなら、まず問題ありません。気にかけたいのは、しきりに・執拗にこするときや、こする場所を気にしている様子があるときです。
注意したい顔こすり|どこを気にしている?
執拗に顔をこするときは、「どこを気にしているか」に注目すると、原因のヒントになります。
| 気にしている場所 | 疑われること |
|---|---|
| 目のまわり(涙・目やに・充血をともなう) | 結膜炎、角膜炎、異物、逆さまつげなど |
| 耳(頭を振る・傾ける、においや赤み) | 外耳炎、中耳炎、耳の異物 |
| 口のまわり(よだれ・口臭をともなう) | 歯や口内のトラブル、アレルギー |
| 顔全体・皮膚(赤み・脱毛) | 皮膚炎、アレルギー |
とくに、目や耳を気にして顔をこするのは、痛みやかゆみのサインのことがあります。赤み・涙・目やに・耳のにおい・頭を振る、といった様子をともなうなら、動物病院で相談してください。目やにが増える目のトラブルや、においが強い耳のトラブルが背景のこともあります。なお、お尻を床にこすりつけて引きずるのは、顔こすりとは別で、肛門腺のトラブルが主な原因です。こちらも気になるときは受診を。
頭を押し付ける「ヘッドプレッシング」は緊急
「ヘッドプレッシング(頭を押し付ける行動)」は、顔こすりと似ていて、まったく意味が違う、見逃してはいけないサインです。
これは、壁や床、家具のかどなどに、頭をぐっと押し付けたまま、じっとしている行動。すりすりと気持ちよさそうにこするのとは違い、目的なく、押し付け続けるのが特徴です。ふらつき、ぐるぐる回る(旋回)、ぼんやりする、といった様子をともなうこともあります。ヘッドプレッシングは、脳や神経の病気(肝臓の病気による肝性脳症、中毒、脳炎、脳腫瘍、水頭症など)の、緊急性の高いサインのことがあります。「気持ちよくてこすっている」のとは、まったくの別もの。もし、頭を押し付けて動かない様子が見られたら、ようすを見ずに、すぐに動物病院を受診してください。

うちの子は、ごはんのあと、決まってソファの端で顔をゴシゴシします。最初は「かゆいのかな?」と心配しましたが、どうやら口のまわりを拭く「食後の儀式」のよう。すっきりした顔でこちらを見てきます。ただ、こすり方が執拗だったり、目や耳を気にしていたりするときは要注意、と知ってからは、様子をよく見るようになりました。
まとめ
結論として、犬が顔をこすりつけるしぐさは、ほとんどが自然な行動で、心配いりません。食後に口のまわりを拭く、においをつける(マーキング)、リラックスや満足の表現、軽いかゆみを取る、などが主な理由です。単発で、そのあと元気ならまず問題なし。一方、注意したいのは、しきりに・執拗にこするときや、こする場所を気にしているとき。目のまわりなら結膜炎や異物、耳なら外耳炎、口まわりなら歯や口のトラブル、皮膚なら皮膚炎・アレルギーが疑われます。赤み・涙・目やに・耳のにおい・よだれなどをともなうなら、動物病院で相談を。そして、壁や床に頭をぐっと押し付けて動かない「ヘッドプレッシング」は、脳や神経の病気の緊急サインのことがあるので、すぐに受診してください。
「犬 顔をこすりつける」についてのFAQ
Q. 犬がごはんのあとに、床やソファに顔をこすりつけます。大丈夫?
A. 多くの場合、大丈夫です。食後の顔こすりは、口のまわりについたフードや水分が気になって、拭き取ろうとしている、いわば「食後のお手拭き」のような行動です。とくに、ウェットフードのあとや、口まわりの毛が長い子によく見られます。すっきりした様子で、そのあと元気なら、心配いりません。ただし、食後に限らず、しきりに口や顔を気にしてこする、よだれや口臭をともなう、という場合は、歯や口のトラブルのことも。気になるときは、口の中も見てあげてください。
Q. 顔のこすりつけで、受診したほうがいいのはどんなときですか?
A. 「執拗にこする」「こする場所を気にしている」ときは注意が必要です。目のまわりを気にして、涙・目やに・充血があるなら、結膜炎や異物など目のトラブル。耳を気にして、頭を振る・耳がにおう・赤いなら、外耳炎など耳のトラブル。口まわりを気にして、よだれや口臭があるなら、歯や口のトラブル。顔全体や皮膚に赤み・脱毛があるなら、皮膚炎やアレルギーが疑われます。こうしたサインをともなうときは、動物病院で相談してください。
Q. 「ヘッドプレッシング」とは何ですか?ふつうの顔こすりと違うのですか?
A. まったく違います。ヘッドプレッシングは、壁や床、家具のかどに、頭をぐっと押し付けたまま、目的なくじっとしている行動です。気持ちよさそうにすりすりこするのとは違い、押し付け続けるのが特徴で、ふらつきや、ぐるぐる回る、ぼんやりするなどをともなうこともあります。これは、脳や神経の病気(中毒、肝臓の病気、脳炎・脳腫瘍など)の、緊急性の高いサインのことがあります。もし見られたら、ためらわず、動物病院へ連れて行ってください。
Q. 顔ではなく、お尻を床にこすりつけて引きずります。同じ原因ですか?
A. いいえ、別の原因です。お尻を床にこすりつけて、ずるずる引きずる行動は「スクーティング」と呼ばれ、多くは肛門腺(肛門のわきにある分泌腺)に分泌物がたまって、むずがゆい・違和感がある、というのが原因です。顔こすり(口を拭く・においをつける等)とは、まったく別のサイン。肛門腺がたまると、炎症を起こしたり、まれに破裂したりすることもあります。頻繁にお尻を引きずる、肛門まわりが腫れている・においがする、という場合は、動物病院やトリマーで、肛門腺のケアについて相談してください。
本記事は、編集部や飼い主自身の経験・見聞きした情報をもとにまとめたものです。執筆者は獣医師ではありません。ペットの健康・病気・体調に関することは症状や個体差によって適切な対応が異なります。気になる症状がある場合や判断に迷うときは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。