犬がお尻を向けてくるのは、多くが深い信頼と安心のあらわれで、嫌っているわけではありません。なでようと近づくと、くるりとお尻を向けてくる愛犬。「え、そっち?」と拍子抜けしつつ、実はこれ、犬からの最上級の信頼のあらわれ。ちょっと拍子抜けするしぐさですが、そこには深い意味がこめられています。いっぽうで、お尻を「気にする」様子だけは話が別で、体からのサインのこともあるので、そこもあわせて知っておきたいところです。
犬がお尻を向けてくるのはなぜ?
犬がお尻を向けてくるのは、こんな気持ちからです。お尻をこちらに向けたり、くっつけたりしてくるのには、次のような思いがあります。
- 信頼・安心している…安心できる相手のそばで、リラックスしているサイン(次でくわしく解説します)
- なでて・かいての要求…お尻や、しっぽの付け根のあたりは、犬がなでられて気持ちいい場所。「ここをかいて」という催促のことも
- あたたかい・一緒にいたい…飼い主の体にお尻をくっつけて、ぬくもりや安心を感じています
- あいさつの名残…犬同士は、お尻のにおいを嗅がせ合ってあいさつします。「敵意はないよ」と伝えるその習性が、人へのお尻向けにも表れていると考えられています
どれも、飼い主を信頼し、心を許している気持ちがベース。ちょっと不思議なしぐさですが、犬にとっては愛情表現のひとつなのです。
なぜ「お尻を向ける=信頼」なの?
「お尻を向ける=信頼」なのは、犬にとって背中やお尻が自分では見えない「死角」だからです。野生の感覚では、背後は敵に襲われるかもしれない、無防備な向きです。
その死角を、あえて相手に見せる・預けるということは、「この人になら、背中を任せても大丈夫」という、深い信頼のあらわれ。犬の祖先が、仲間と背中合わせで眠り、お互いの死角を守り合っていた習性の名残とも言われます。よく「上に乗る=順位が上」「お尻を向ける=下に見ている」といった説を耳にしますが、こうした支配・順位の考え方は、近年では否定的にとらえられるのが主流。お尻を向けるのは、上下関係の主張ではなく、信頼と安心のサインと考えてよいでしょう。堂々とお尻を預けてくれたら、その信頼にこたえて、やさしくなでてあげてください。
気をつけたい「お尻を気にする」サイン
お尻を「気にする」様子は、「向ける」のとは別で、肛門腺や皮膚のトラブルのサインのことがあります。お尻を「向ける」のは微笑ましい行動ですが、お尻を「気にする」様子は話が別。次のようなサインは、体のトラブルのことがあります。
- お尻を床にこすりつけて歩く(ずりずりと引きずるような動き)
- 肛門やお尻のまわりを、しきりになめる・かじる
- お尻を触ろうとすると、痛がる・怒る
- 肛門のまわりが赤い・腫れている、においが強い
これらは、「肛門腺(肛門のわきにある分泌腺)」に分泌物がたまって炎症を起こしていたり、皮膚のトラブルがあったりするサインのことがあります。肛門腺のトラブルは、悪化すると腫れて破裂することもあるので、放置は禁物。とくに、小型犬や肥満ぎみの子、高齢の子は起こりやすいとされます。こうした様子が見られたら、動物病院で診てもらいましょう。「信頼のお尻向け」と「不調のお尻気にし」は、別ものと覚えておくと安心です。

初めてお尻をぐいっと向けられたときは、正直「なんで顔じゃないの?」と苦笑いでした。でも、あれが最上級の信頼だと知ってからは、見方がすっかり変わりました。堂々と背中を預けてくれるって、考えてみればすごいこと。今ではお尻を向けられると、ちょっと誇らしい気持ちになります。
まとめ
犬がお尻を向けてくる・くっつけてくるのは、信頼と安心、なでての要求、ぬくもりを求める気持ち、そして犬同士のあいさつの名残などが理由です。背中やお尻という死角を預けるのは、「あなたを信頼している」という深いサイン。「お尻を向ける=下に見ている」という支配・順位の説は、近年では否定的にとらえられており、上下関係の主張ではありません。ただし、お尻を床にこすりつける、肛門をしきりになめる、触ると痛がる、といった「お尻を気にする」様子は、肛門腺の詰まりや皮膚トラブルのサインのことも。とくに小型犬・肥満・高齢の子は注意し、気になるときは受診を。だからこそ、愛犬が堂々とお尻を預けてくれたら、その信頼にこたえてあげたいですね。
「犬 お尻を向ける」についてのFAQ
Q. 犬がお尻を向けて座るのは、嫌われているからですか?
A. むしろ逆で、大好き・信頼しているサインであることがほとんどです。顔を向けないのは、そっけないのではなく、「この人のそばなら、背後を無防備にしても安心」と感じているから。犬にとって背中側は自分で守れない向きなので、そこを預けるのは、相手を信頼している証拠なのです。ソファでお尻をぴたっとくっつけて座るのも、同じ気持ち。嫌われているのでは、と心配しなくて大丈夫ですよ。
Q. お尻をくっつけてくるのは、なでてほしいということですか?
A. その可能性は高いです。お尻や、しっぽの付け根のあたりは、犬が自分ではかきにくく、なでられると気持ちいい場所。お尻を押しつけてくるのは、「ここをかいて・なでて」という催促のことがよくあります。あわせて、飼い主にくっついて安心したい、あたたかさを感じたい、という甘えの気持ちも。要求に応えてなでてあげるのは問題ありませんが、しつこく催促がエスカレートするようなら、ほどよく応じるくらいがちょうどよいでしょう。
Q. 「お尻を向ける=自分が上と思っている」って本当ですか?
A. その説は、近年では否定的にとらえられるのが主流です。かつては「犬が人に順位をつけ、下に見ているとお尻を向ける」といった考え方もありましたが、今では、お尻を向けるのは信頼や安心、甘えの表現と理解されています。上下関係の主張ではないので、「なめられているのでは」と心配して、やめさせる必要はありません。安心して、その信頼にこたえてあげて大丈夫です。
Q. お尻を地面にこすりつけているのですが、これも甘えですか?
A. それは甘えとは分けて考えたいサインです。お尻を床にずりずりこすりつける動きは「スクーティング」と呼ばれ、肛門のあたりがかゆい・気持ち悪いときに見られます。多いのは「肛門腺」に分泌物がたまって炎症を起こしているケース。ほかに、肛門をしきりになめる、赤く腫れている、なども要注意です。こじらせると切開が必要になることもあるので、こすりつけが続くようなら、早めに動物病院で診てもらってください。
本記事は、編集部や飼い主自身の経験・見聞きした情報をもとにまとめたものです。執筆者は獣医師ではありません。ペットの健康・病気・体調に関することは症状や個体差によって適切な対応が異なります。気になる症状がある場合や判断に迷うときは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。