犬の口臭の多くは歯周病のサインで、においによっては腎臓や糖尿病など全身の病気が隠れていることもあります。愛犬とのふれあいのなかで、ふと気になる、お口のにおい。「年だから仕方ない?」と思いがちですが、じつは、3歳以上の犬の約8割が、歯周病になっているともいわれます。犬の口臭の原因と、においでわかる病気、そして正しいケアを解説します。
犬の口臭の原因|いちばん多いのは歯周病
犬の口臭の原因で、もっとも多いのが歯周病・歯石です。犬は、歯垢が歯石に変わるのが人より速く(3〜5日ほど)、歯石にたまった細菌が、においを出します。放っておくと、歯ぐきの炎症から、歯が抜けたり、あごの骨がとけたりすることも。ほかにも、次のような原因があります。
- 歯周病・歯石…最多の原因。歯ぐきの赤み・出血、歯の黄ばみをともなう
- 口内炎・口の中の腫瘍・歯の破折…痛みやよだれ、血の混じったにおいのことも
- 食べ物・フードのにおい、食べかす…一時的なもの
- 子犬の歯の生え変わり…生後4〜7か月ごろの一時的なにおい。多くは心配いりません
とくに、口臭とあわせて、歯ぐきが赤い・出血する、歯が茶色い、食べにくそう、よだれが増えた、といった様子があれば、歯周病が進んでいるサインです。
においの種類でわかる、隠れた病気
においの種類は、体からのメッセージで、歯以外の全身の病気が、口のにおいにあらわれることがあります。次の表を参考にしてください。
| においの種類 | 疑われること |
|---|---|
| 生ゴミ・腐敗臭 | 歯周病、口の中の腫瘍、消化器の不調 |
| アンモニア臭(おしっこのよう) | 腎臓の病気(尿毒症)、肝臓の病気 |
| 甘い・果物のような(アセトン臭) | 糖尿病 |
| 便のようなにおい | 腸閉塞など、重い消化器の病気 |
とくに、アンモニア臭(腎臓)、甘いにおい(糖尿病)、便のようなにおい(腸閉塞)は、全身の病気のサインのことがあります。歯みがきをしても口臭が改善しない、急に口臭が強くなった、というときは、歯だけでなく、全身の状態を診てもらう必要があります。においの種類を、受診のときに伝えられるようにしておきましょう。
口臭対策|毎日の歯みがきが基本
口臭対策の王道は、毎日の歯みがきです。歯垢は3〜5日で歯石になり、歯石になると歯みがきでは取れなくなるので、こまめなケアが肝心。デンタルガムやおもちゃは、あくまで補助と考えましょう。とはいえ、「歯みがきを嫌がる」という子は多いもの。次のように、段階を追って、少しずつ慣らすのがコツです。
- ステップ1…まず、口のまわりや口元を触られることに慣らす(できたら褒める・おやつ)
- ステップ2…指やガーゼで、歯や歯ぐきにやさしく触れる
- ステップ3…犬用の歯ブラシに、少しずつ移行する
あせらず、犬が嫌がらない範囲で、毎日少しずつ。1回で完璧を目指さず、「口を触らせてくれたらOK」くらいの気持ちで続けると、習慣になります。それでも歯石がついてしまったら、動物病院で、麻酔下での歯石除去(スケーリング)を。歯ぐきの下の歯石まで、しっかり取り除けます。

うちの子も、最初は歯ブラシを見ただけで逃げていました。でも、「口を触ったらおやつ」から始めて、数週間かけてガーゼ、歯ブラシ……と、気長に進めたら、今では歯みがきタイムをおとなしく受け入れてくれます。焦らず、その子のペースで。続けるほど、口のにおいも歯の健康も、変わってくると実感しています。
「無麻酔の歯石取り」のリスクに注意
無麻酔での歯石除去には、注意が必要です。「麻酔は不安だから、無麻酔で歯石を取ってほしい」——そう思う飼い主さんも多いでしょう。ですが、次のような理由から、慎重に考えたい方法です。
まず、動いてしまう犬を押さえて、鋭い器具で歯石を削るのは、歯ぐきや舌、口の中を傷つけたり、あごを痛めたりする危険があります。そして何より、無麻酔では、歯の見えている部分しか処置できず、歯周病の本当の原因である「歯ぐきの下(歯周ポケット)の歯石」は取り除けません。見た目はきれいになっても、歯周病は進行してしまうのです。獣医師の団体も、資格のない人が行う無麻酔の歯石除去に、警鐘を鳴らしています。歯石をしっかり取るなら、動物病院で、麻酔と検査のもとで行う処置が安心。麻酔が心配なら、事前の検査や、そのリスクについて、獣医師によく相談してください。
まとめ
犬の口臭の原因は、その多くが歯周病・歯石です(3歳以上の約8割が歯周病とも)。犬は歯石ができるのが速いため、日ごろのケアが大切。ほかに、口内炎や口の腫瘍、子犬の生え変わりなどもあります。そして、においの種類も手がかりで、アンモニア臭は腎臓、甘いにおいは糖尿病、便のようなにおいは腸閉塞など、全身の病気のサインのことも。歯みがきをしても改善しない、急に強くなった口臭は、受診してください。対策の基本は、毎日の歯みがき(嫌がる子は口を触ることから段階的に)。歯石がついたら、動物病院での麻酔下スケーリングを。「無麻酔の歯石取り」は、口を傷つける危険があり、歯ぐきの下の歯石は取れず歯周病が進むので、注意が必要です。気になる口臭は、まず動物病院で相談を。
「犬 口臭」についてのFAQ
Q. 犬の口が臭いのは、年のせいで仕方ないのでしょうか?
A. 「年だから」で片付けないほうがよいです。犬の口臭の多くは、歯周病のサイン。3歳以上の約8割が歯周病とも言われ、放っておくと、歯が抜けたり、あごの骨がとけたりすることもあります。また、においの種類によっては、腎臓や糖尿病など、全身の病気が隠れていることも。日ごろの歯みがきで予防でき、歯石がついても、動物病院で除去できます。「もう年だから」とあきらめず、口のにおいが気になったら、口の中(歯ぐきの赤み・歯石)をチェックし、気になれば受診してください。
Q. 口臭のにおいで、病気がわかることがありますか?
A. 手がかりになります。生ゴミ・腐敗のようなにおいは、歯周病や口の腫瘍、消化器の不調。おしっこのようなアンモニア臭は、腎臓の病気(尿毒症)や肝臓の病気。甘い・果物のようなにおいは、糖尿病。便のようなにおいは、腸閉塞など重い消化器の病気。こうした全身の病気が、口のにおいにあらわれることがあります。とくに、歯みがきをしても改善しない、急に口臭が強くなった、というときは、歯以外の原因も疑われます。においの種類を、受診の際に獣医師に伝えると、診断の助けになります。
Q. 歯みがきを嫌がります。どうすればいいですか?
A. あせらず、段階を追って慣らすのがコツです。いきなり歯ブラシを口に入れると、多くの犬は嫌がります。まず、口のまわりや口元を触られることに慣らし(できたらおやつで褒める)、次に指やガーゼで歯・歯ぐきにやさしく触れ、最後に犬用の歯ブラシへ、と少しずつ進めます。1回で完璧を目指さず、「今日は口を触らせてくれた」くらいでOK。毎日少しずつ続けると、習慣になります。歯垢は3〜5日で歯石になるので、こまめさが大切。それでも難しい場合は、デンタルガムなどの補助や、獣医師への相談を。
Q. 麻酔なしで歯石を取ってもらうのは、どうですか?
A. 注意が必要です。無麻酔の歯石除去は、動く犬を押さえて鋭い器具を使うため、歯ぐきや舌、口の中を傷つけたり、あごを痛めたりする危険があります。さらに、見えている部分の歯石しか取れず、歯周病の本当の原因である「歯ぐきの下(歯周ポケット)の歯石」は除去できません。見た目はきれいでも、歯周病は進行してしまいます。獣医師の団体も、資格のない人が行う無麻酔の処置に警鐘を鳴らしています。歯石をしっかり取るなら、動物病院での麻酔下スケーリングが安心。麻酔が不安なら、事前検査やリスクを、獣医師に相談してください。
本記事は、編集部や飼い主自身の経験・見聞きした情報をもとにまとめたものです。執筆者は獣医師ではありません。ペットの健康・病気・体調に関することは症状や個体差によって適切な対応が異なります。気になる症状がある場合や判断に迷うときは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。