目次
犬の歯周病は3歳以上の多くがかかる身近な病気で、ついた歯石は歯磨きでは取れないため、毎日の予防がすべてです。愛犬の口、なんだか匂う……そう感じたことはありませんか。じつは、その口臭は、歯周病のサインかもしれません。犬の歯周病は、とても身近な病気で、3歳以上の犬の多くが、歯周病か、その予備軍ともいわれます。しかも、放っておくと、歯を失うだけでなく、あごの骨や、心臓・腎臓など、全身の健康にまで影響することも。そして大切なのは、ついた歯石は、歯磨きでは取れないということ。だからこそ、毎日の予防がすべてです。犬の歯周病と、正しいデンタルケアを、順番に見ていきましょう。
犬の歯周病は、とても身近な病気
犬の歯周病は、歯にたまった歯垢(細菌のかたまり)が原因で、歯ぐきや、歯を支える組織に炎症が起きる病気です。3歳以上の犬の、8割ほどが、歯周病か予備軍ともいわれるほど、ありふれています。
ここで、いちばん知っておいてほしいのが、歯垢が「歯石」に変わるスピードです。犬は、歯垢がわずか3〜5日ほどで、歯石になるといわれます(人は20日ほど)。そして、いったん歯石になると、歯磨きでは取れません。取り除くには、動物病院での処置が必要になります。つまり、歯石になる前に、毎日の歯磨きで歯垢を落とすことが、何よりの予防なのです。「歯石を家で取りたい」と思う方は多いのですが、家庭でできるのは、あくまで歯石になる前の「予防」です。
歯周病のサインと、放っておくリスク
歯周病は、初期は気づきにくいもの。次のサインを、軽い順に見ていきましょう。
| 進行の段階 | こんなサイン |
|---|---|
| 初期 | 口臭、歯石(黄〜茶色)、歯ぐきの赤み |
| 中期 | 歯ぐきの腫れ・出血、よだれ、口を触られるのを嫌がる |
| 進行期 | 硬いものを食べにくい・片側で噛む、歯がぐらつく・抜ける |
| 重度 | 頬や目の下が腫れる、くしゃみ・鼻水・鼻血 |
とくに、頬や目の下が腫れる(歯の根の膿がたまる)、くしゃみや鼻水・鼻血が出る(口と鼻がつながってしまう)のは、進行したサインです。そして、歯周病を放っておくと、口の中だけの問題ではすみません。歯を支える骨が溶けて歯が抜ける、あごの骨が細くなって、わずかな衝撃で骨折する(とくに小型犬)、目の下に穴があいて膿が出る。さらに、歯周病の細菌が血流に乗って、心臓・腎臓・肝臓など、全身の臓器に影響することもあります。歯周病のケアは、口だけでなく、全身の健康と、寿命を守ることにつながるのです。
正しい歯磨きのやり方|嫌がる子への慣らし方
歯磨きは予防の基本で、歯垢が歯石になる前(3〜5日以内)に落とすのが目的なので、理想は毎日、少なくとも2〜3日に1回を目指しましょう。犬用の歯ブラシや、歯磨きシート、そして犬用の歯磨き粉(味つきで、犬が喜ぶもの)を使います。
嫌がる子には、いきなり歯ブラシを使わず、段階的に慣らすのがコツです。
- ①口のまわりを触ることに慣らす
- ②唇をめくって、歯や歯ぐきを触る
- ③ガーゼやシートで、歯を拭く
- ④歯ブラシに移行する(磨きやすい前歯から、奥歯へ)
各ステップで、できたら褒めて、おやつをあげて、「歯磨き=良いこと」と覚えてもらいます。一度に全部やろうとせず、無理をせず、何日〜何週間もかけて進めましょう。なお、歯磨きガムや、デンタルおもちゃ、ジェルは、あくまで補助で、歯ブラシの代わりにはなりません。そして、人間用の歯磨き粉は、絶対に使わないでください。飲み込む前提でない成分が含まれ、とくにキシリトールは、犬に低血糖や肝障害を起こし、命に関わることがあります。必ず、犬専用のものを使いましょう。

うちの子は、最初は歯ブラシを見ただけで逃げていました。でも、獣医さんに「口を触るところから、少しずつでいいよ」と言われ、毎日ちょっとずつ慣らして、今では歯磨きをさせてくれます。あんなに嫌がっていたのに、と驚くほど。焦らず、褒めながら進めたのが、よかったみたいです。
ついた歯石は、動物病院で|麻酔ありと無麻酔の違い
歯石がすでについてしまったら、動物病院での歯石除去(スケーリング)が必要です。これは、全身麻酔をかけて行うのが一般的。麻酔と聞くと不安に思うかもしれませんが、理由があります。歯周病の本体は、歯と歯ぐきの間の「歯周ポケット」の奥にあり、麻酔をかけることで、そこまで安全に、痛みを与えず、しっかり洗浄・処置できるからです。抜歯や、レントゲンでの評価も含めた、根本的な治療ができます。
一方、「無麻酔」で歯石を取る処置には、注意が必要です。無麻酔では、見える表面の歯石を削るだけで、肝心の歯周ポケットの中を洗えず、歯周病そのものは治りません。見た目はきれいになっても、病気は進行したまま、ということも。また、動く犬を押さえての処置は、歯を傷つけたり、痛みや恐怖を与えたり、口の中をケガさせたりするリスクもあります。麻酔のリスクは、事前の血液検査などで管理できるので、かかりつけの獣医師と、よく相談してください。そして、初期は無症状のことが多いので、定期的な歯科検診で、早めに気づくことも大切です。
まとめ
犬の歯周病は、3歳以上の多くがかかる、とても身近な病気です。カギは、歯垢が3〜5日ほどで歯石に変わり、いったんついた歯石は、歯磨きでは取れないこと。だからこそ、歯石になる前に、毎日の歯磨きで歯垢を落とす「予防」が、すべてです。サインは、口臭や歯ぐきの赤みといった初期のものから、腫れ・出血、歯のぐらつき、そして頬や目の下の腫れ・くしゃみ・鼻血まで。放っておくと、歯を失うだけでなく、あごの骨折や、心臓・腎臓など全身の病気にもつながります。歯磨きは、嫌がる子には段階的に慣らし、犬用の歯磨き粉を使い、人間用(とくにキシリトール入り)は絶対に使わないこと。ついた歯石は、動物病院での処置(全身麻酔が一般的)が必要で、無麻酔の処置には限界とリスクがあります。定期的な歯科検診も、あわせて受けましょう。
「犬 歯磨き・歯周病」についてのFAQ
Q. 犬の歯磨きは、毎日しないといけませんか?
A. 理想は毎日です。理由は、歯垢が、わずか3〜5日ほどで歯石に変わってしまうから。そして、いったん歯石になると、歯磨きでは取れず、動物病院での処置が必要になります。ですから、歯石になる前に、毎日の歯磨きで歯垢を落とすのが、いちばんの予防です。とはいえ、毎日が難しい場合でも、少なくとも2〜3日に1回は磨きたいところ。歯磨きガムやデンタルおもちゃは、補助にはなりますが、歯ブラシの代わりにはなりません。まずは、口を触ることから少しずつ慣らして、歯磨きの習慣をつけていきましょう。犬用の歯磨き粉を使うと、犬も喜んで、続けやすくなります。
Q. 犬の歯石は、家で取れますか?
A. 残念ながら、いったんついてしまった歯石は、家庭の歯磨きでは取れません。歯石は硬く歯に固着していて、取り除くには、動物病院での専用の処置(スケーリング)が必要です。市販の器具で、自分で削り取ろうとするのは、歯や歯ぐきを傷つけたり、犬に痛みや恐怖を与えたりする危険があるので、避けてください。家庭でできるのは、あくまで「歯石になる前の予防」=毎日の歯磨きで歯垢を落とすことです。すでに歯石がたくさんついている、口臭がひどい、歯ぐきが腫れている、というときは、動物病院で相談しましょう。そのうえで、処置後は、再びつかないよう、毎日のケアを続けることが大切です。
Q. 人間用の歯磨き粉を使ってもいいですか?
A. 絶対に使わないでください。人間用の歯磨き粉は、口をゆすいで吐き出すことを前提に作られていて、飲み込むと体によくない成分が含まれます。犬は、歯磨き粉を飲み込んでしまうので、これは大きな問題です。とくに、一部の歯磨き粉に含まれるキシリトールは、犬にとって非常に危険で、少量でも低血糖や肝障害を起こし、命に関わることがあります。歯磨きには、必ず、飲み込んでも安全な、犬専用の歯磨き粉を使ってください。犬用は、鶏肉味など、犬が喜ぶ味つきのものが多く、歯磨きを嫌がる子でも、続けやすくなります。もし人間用を舐めてしまい、体調に変化があれば、早めに動物病院で診てもらいましょう。
Q. 歯石を取る処置は、麻酔なしではできないのですか?
A. 無麻酔で歯石を取る処置もありますが、注意が必要です。無麻酔では、見える表面の歯石を削るだけで、歯周病の本体である「歯周ポケット」の奥までは洗えず、歯周病そのものは治りません。見た目はきれいになっても、病気は進行したまま、ということもあります。また、動く犬を押さえて処置するため、歯を傷つけたり、痛みや恐怖を与えたり、口の中をケガさせたりするリスクもあります。動物病院で一般的な、全身麻酔下の処置は、歯周ポケットの奥まで安全に洗浄でき、抜歯やレントゲン評価も含めた根本的な治療ができます。麻酔のリスクは、事前の検査で管理できるので、かかりつけの獣医師と、よく相談して決めてください。
本記事は、編集部や飼い主自身の経験・見聞きした情報をもとにまとめたものです。執筆者は獣医師ではありません。ペットの健康・病気・体調に関することは症状や個体差によって適切な対応が異なります。気になる症状がある場合や判断に迷うときは、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。